我が家のファンになってもらうために(のらやま通信 NO.83 2001年11月号)

我が家のファンになってもらうために

 道の駅しょうなんがオープンして半年がたちました。お陰様で我が家の農産物・加工品も直売所で順調に売れています。梨、米販売に次ぐ第三の農業経営の柱になりそうです。我が家のキャッチフレーズは新鮮、健康、安全。お客さまに「すぎの梨園」「すぎのファーム」のファンになってもらえるよう願いを込めて商品づくりをしてきました。

 直売所への出品者は沼南町内の農家約100軒。プロの農家同士が品質と価格を競います。梨が主力の我が家がネギ、ダイコン、ホウレンソウなどの野菜で専門家と競争するのは得策ではありません。そこで他の農家と競合しないようにナンバーワンよりオンリーワンを目指してきました。

 

 我が家のヒット商品を分類すると次の3点になります。

①季節感を感じさせるもの

 草餅、ショウブの葉(節句を過ぎればただの葉っぱですが)

②スーパーで売っていないもの

 ウコン(肝臓に良いとされる健康食品。生のウコンはショウガ根のような形をしていて、大変に苦いものです。スーツ姿の男性が買っていきました。)、ツル菜(露地ホウレンソウのない5、6月の青菜としておひたし、味噌汁に利用してきたものです。)、黄金千貫(白いサツマイモで、てんぷらに最適)

③添加物のない加工品

 4月の草餅、5、6月の漬け物、10月のまんじゅう。母、祖母ともに食品加工が好きだからやれるのですが、毎日、時間との戦いです。

 

 この他にも、梨、サトイモ、エダマメ、ラッカセイ、切り花などを出品してきました。

 

 販売上の工夫もいろいろ試みてきました。

①単価を抑え、価格変動は避ける

 1袋、100〜300円で商品づくりをしています。市場価格と小売価格の中間値ぐらいがちょうど良いみたいです。

②毎日定量を出品する

 毎日というのはけっこうしんどいものです。商品が売れ切れるのはうれしいのですが、翌日出品するための準備が毎日続きます。畑に行ってイモを掘り起こして、洗って袋詰めしなければなりません。祖父は「百姓は夜なべ、朝わざに仕事をしないと金は貯まらん」といいますが、父は梨の収穫が終わっても休めないと愚痴っています。夜10時からまんじゅうのあんこを作ったこともあります。まんじゅうを待っているお客さまの期待に答えようとがんばるのか、売れるぞと眼の前にニンジンがぶら下がっているからがんばるのか。

③セット販売

 我が家で作るサツマイモはベニアズマに黄金千貫、ベニハヤト、山川紫(ムラサキイモ)。千葉のサツマイモといえばほとんどがベニアズマで、他の農家が出品するのもベニアズマばかりです。そんな中で2、3種類のサツマイモを組み合わせた袋はお客さまの眼に止まるようです。黄金千貫がもっと欲しいとわざわざ家にまで訪ねてくださった方もいました。まんじゅうも小豆のあんことイモのあんこの2ケ入りパック。ただいま完売記録更新中です。

④POPでの情報発信

 たくさんの野菜が並んでいるなかで、すぎのさんちの野菜はここですと自己主張するために、時間の余裕がある時は父がパソコンで、その場しのぎの時は母が段ボールの裏側に走り書き。走り書きでもそれがないと売れ残ることもあって、その重要さを実感します。

 POPの内容はキーワードにしている新鮮、健康、安全にかかわるものを何か一つを入れて、あまり見かけない商品については調理法などをワンポイントアドバイスします。たとえば、肝臓に良いウコン、アントシアニン色素を多く含んだムラサキイモ、赤しその葉でジュースはいかが、など。春先にはすぎのファーム便りも週がわりで発行し、梨づくりの進み具合を発信してきました。

 この6ヶ月で直売所の野菜の種類も多くなり、農家同士の競争が商品の品質向上につながっているようです。よく「作り手の顔の見える関係」とかいわれます。朝、出品する時にお客さまから声をかけられることがあります。「がんばっているね」なんていわれると、また元気がでます。

 これからも直売所を通じた「交流」「自己表現」を楽しんでいきたいと思います。

 

※のらやま通信 NO.82 2001年10月号は、

我が家の長女の書いた文が農文協の雑誌『食農教育』(2001年9月号)に掲載された記事を複写転載していましたが、その記事データが消えてしまったようです。