農産加工所「すぎのファーム」開始です(のらやま通信 NO.77 2001年5月号)

ごあいさつ

わが家は梨と米の専業農家で4世代8人家族。曾祖母、祖母、母と自給用の食べ物の加工技術を受け継いできました。その思いは「子どもを成長させ、老人を長生きさせ、働き手の明日のエネルギーとなること」。この思いをそのままに、農産加工所『すぎのファーム』を起業しました。たとえば草餅は、子らがヨモギ摘み、祖父が餅つき機の調整、祖母が餅つき加減の判断、母がパッキング、父がラベルづくりと家族みんなで手作りしました。これからも添加物なしの安全、健康、手作りの味をお届けします。よろしくお引き立ていただけますようお願いいたします。

2001年4月 すぎのファーム

  4月20日、道の駅「しょうなん」のオープンと同時に農産物直売所も開店です。『すぎのファーム』ブランドのもと、わが家らしい農産加工品を出品しようと家族で相談した結果、草もち、もち、漬物の3品目でチャレンジすることになりました。

 製造責任者の母は4月に入るとそわそわ。農作業に追われて加工品の方は具体的に動けません。包材屋さんに行けたのはわずか3日前。草もちを入れるフードパック、もち用のビニール袋、漬物用のビニール袋、どれをとってもいくつもの種類があって、材質、大きさ、数量を決めるのにひと苦労。梨や米については父等が決めたことで物事が動いていたのですが、こと加工品については母が決めなければなりません。やる気がでる反面、責任と不安を感じたものでした。

 初日は大忙し。9時までに納品するため8時30分には家を出なければなりません。製造数量目標60パックから逆算して当日は5時には起床。前日0時過ぎまであんこづくりやラベル作成、パックへのラベル貼りの作業がかかってしまいました。眠い目をこすりながらガスコンロに点火。6升、約9kgのコシヒカリを蒸すために大量のお湯が必要です。お湯が沸くまでのあい間を惜しんで漬物の袋づめ。

 6時、もちつき開始。もちろん機械を使います。もちつき機にもいろいろな種類があって、街のもち屋さんが使うような電動式で杵をつく本格的なものでもなく、また、蒸かした米をボールのような中に入れてくるくる回してできる家庭用のもちつき機でもなく、わが家のものは上から蒸した米を入れると、らせん状の部分を通ってこねられてもちになって出てくるという機械。「もちつき機」というよりは「もち練り機」。

簡易業務用といった性格のものです。

 

 うるち米ヨモギをただ機械にほおり込めば草もちはできるというのではありません。

 まず米(うるち米)を蒸かします。普通に炊き上がったところで、冷水に浸して冷まします。ごはん粒を洗うような感じです。それを再度蒸かします。二度蒸かししたものを少し冷ましたところでもち練り機に通します。別にゆでてあったヨモギも適当に散らしながら練っていきます。

 1回機械を通したくらいではまだまだら模様のもちです。2回、3回と機械を通すうちにきれいな色の草もちになっていきます。機械がない時代、熱が逃げないうちに臼と杵でつくのは本当に大変だったそうです。米を売るのではなく手間を売るようなものと言われる由縁です。

 草もちの他、古代米入りのおはぎ、ヨモギのもち、ムラサキイモのもち、漬物等の準備が整った時には9時を回っていました。20分遅れの初日の納品になってしまいました。欲張り過ぎという声も。

 会計待ちのお客様が手に取りやすいようないわば特等席に置かせてもらいました。はたしてお客様に選んでもらえるでしょうか。商品を並べ終えてもすぐには帰れませんでした。5分経過、まだ1個も売れません。「こんなに苦労して作っても売れ残ってしまうのだろう」という祖父の声も気になります。夜7時の閉店までにいくつか売れればいいさと気を取り戻し、自宅に戻って農作業(梨の摘果)を開始。

 とはいえ、やはり売れ行きが気掛かりです。昼過ぎに直売所をのぞくことにしました。駐車場に車が入り切れないほど混雑していました。どれどれ、草もちは?出品箱の中には「この商品は完売しました」の紙一枚。やった、完売だ!2時でした。

 

 その後もゴールデンウィーク中の土日、祝祭日に草もちを出品しました。連日、開店2時間で完売だったそうです。「もっと量を持ってきていいよ」と直売所運営者のIさんが言います。「平日に来たお客様に草もちはないのって聞かれるよ」とレジ打ちのママが言います。

 

 5月5日、立夏を迎えて、春の香りをお届けした草もちの出品は終了しました。また来春、がんばりましょう。これからしばらくは漬物でチャレンジです。