ちばエコ農産物認証スタート(のらやま通信 NO.91 2002年7月号)

ちばエコ農産物認証スタート

 2002年の4月から千葉県でも特別栽培農産物認証制度が動きだしました。化学農薬、化学肥料の使用が標準の半分以下のものを「ちばエコ農産物」として県独自に認証しようというものです。わが家の父も生産者代表として昨年度、その検討委員会に参加していました。「生産現場での技術的な支援体制は確立されているのか」「有機農産物に対する消費者の意識はまだまだだ。実際、特別栽培農産物ぐらいでは市場での評価は価格に反映されない」「認証制度そのものを信頼してもらえるのか」なども議論を呼びましたが、いろいろあってとにかくスタートです。

 千葉県の認証制度では全国に先駆けて『生産情報の開示』を組み込みました。インターネットを使って生産履歴(農薬や肥料の使用状況)を確認できるというものです。当初の原案にはなかったのですが、梨の直売と減農薬栽培に取り組んできた経験から、委員として強く主張した結果と自負しています。

 減農薬栽培に取り組んで10年余り。失敗も重ねてきました。たとえば殺虫剤を減らすため、天敵やフェロモン剤などの生物農薬を試みています。化学農薬がいつでも、どこでも、誰でも効かせることのできる防除資材だとすると、生物農薬は特定の時期に、特定の場所で、特定の人だけが効かせることのできる防除資材かもしれないと思い知らされてきました。現在の技術レベルでは多少の病虫害が出てしまいます。それを認めるのか認めないのか。どの程度なら許されるのかを考えていくと、なぜ減農薬に取り組むのかに行き着きます。

 減農薬に取り組む動機にはいろいろあるかと思います。私たちははじめ「散布作業を省いて楽をしたい」ということがきっかけでした。「付加価値をつけて差別化したい」とか「環境問題に対する社会的責務だから」という動機も掲げてきました。そのうちに農薬や病害虫のことを知り、自分で判断して防除ができるようになると、もっと先へという気になってきます。「主体的に関れて面白いから」という動機が芽生えてきました。こういう気持ちは農家として大事な資質とは思いますが、経営には結びつきにくいものです。

 

 一方、わが家で梨、米の直売をはじめて15年以上になります。お客さまとの信頼関係だけが頼りですが、食を取り巻く環境は環境ホルモンや遺伝子組み換え、ホルモン剤食品添加物残留農薬など、不安、心配だらけです。不当表示や偽装は不安に一層の拍車がかかります。

 これらがモラルの問題であるとすると、わが家でできることは何か。やはり生産に関する情報発信でしょうか。これまでも農家や生産の現場リポートのようなものを、この「のらやま通信」紙上等で取り上げてきましたが、まだ足りないかもしれません。梨の減農薬栽培に取り組んでいるといっても、以前と比較して回数が半分になったとか、全国からの視察を受け入れていますという表現でしか発信してきませんでした。

 

 そこで、生産者がこの時期にこれこれのためにこれだけの量の農薬を使ったと情報発信し、消費者はそれをみて購入するかどうかを判断するという仕組みはどうでしょうか。直接的で、誤解を産むかもしれませんが、食品表示に対する不信感、疑念がうずまく今日では、むしろ生産者と消費者の信頼関係を築く近道であるように思います。減農薬はそのための手段になるはずです。これからは「顔の見える農家になるため」に減農薬化に取り組んでいきたいと考えています。

 

 と書いておきながら、「ちばエコ認証」はまだ始まったばかりで実績はありませんし、わが家のホームページで生産履歴を開示するシステムもできていません。そのうち必ず。乞う御期待。7月11日に全国ナシ研究大会で減農薬の事例を発表することになり、その内容を考えていたらこんな通信になってしまいました。

 さて、5月までは今年も季節が早く回るのかと思えましたが、梅雨に入ったとたんに梅雨寒むの日が続きました。エルニーニョ注意報が出たり、消えたり、また出たり。暑い夏になればいいのですが…