2001年の梨畑から(のらやま通信 NO.79 2001年7月号)

2001年の梨畑から

  • 2001年4月28日(写真左下)

 半月前、白い花に包まれていた梨園はもう緑一色に。一つの花芽には8つの花が隠れていて、すべて交配されると一ケ所に8つの実がついてしまいます。この中から一つだけの実にして、さらに間引きます。これを摘果作業といい、実を大きくするための重要な作業です。これからひと月間の勝負です。

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梨の幼果
  • 2001年5月3日

 昨年12月に梨園の中に種子を蒔いたライ麦が背の高さほどになっています。このライ麦は実を採るのでなく刈り取られて緑肥になり、根が枯れるとそこが土中に空気を送る孔(あな)となります。根の深さは穂の高さと同じくらいにもなるとか。ライ麦梨園の中で冬から春の太陽エネルギーを有機質に変え、土を耕し柔らかくするはたらきをしています。

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緑肥用ライ麦

 

  • 2001年5月9日

 梨の枝にかけられたチューブ状のものが、シンクイムシのメスの臭い(性フェロモン)を畑中にまき散らしオスがメスを捜せなくする資材です。シンクイムシの幼虫は果実に穴をあける害虫。フェロモン剤は害虫を殺す農薬ではありませんが、卵を生ませないことで被害を少なくします。天敵にも環境にも安全な減農薬の切り札です。

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フェロモン剤
  • 2001年5月16日

5月11日夜、昨年に引き続いて雹の被害を受けてしまいました(写真は被害果)。梨畑のほとんどでは多目的防災網をかけてあり、親指大の雹を受け止めてくれましたが、昨年の降雹で破れた網を交換しようとしていた約25a分は直撃されました。すぐに網を張れるまで準備していただけに残念です。

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降雹の被害果
  • 2001年5月30日

 梨の葉の裏についた米粒大の黄色いつぶつぶ。以前は害虫の卵と思ってつぶしていましたが、アブラムシの天敵テントウムシの卵だったのです。梨園の中の虫はすべて害虫という考えがいかに間違えていたかを思い知らされたきっかけとなりました。この時期、殺虫剤散布を控えるとアブラムシの発生に合わせてよく見られるようになります。

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テントウムシの卵
  • 2001年6月8日

 テントウムシの卵は4、5日で幼虫になります。一日で百匹以上のアブラムシを食べるという大食漢で、アブラムシのついた枝もすぐにきれいにしてくれるありがたい天敵昆虫です。

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テントウムシの幼虫
  • 2001年6月14日(写真左下)

ライ麦についたアブラムシを食べているナミテントウの成虫。麦のアブラムシは梨のアブラムシと種類が違い梨にはつきませんが、テントウムシはどちらも食べてくれます。梨園の中のライ麦は天敵を蓄えてくれる働きもしているというわけです。これをバンカープランツ(貯える植物)といいます。ライ麦でアブラムシの天敵防除が可能になるかもしれません。

 

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テントウムシの成虫
  • 2001年6月28日

 沼南町果樹組合研究部では10年程前(1992年頃)から梨の減農薬栽培に取り組んでいます。現在では取り組む前と比べると農薬散布回数を約半分に減らしています。その結果は千葉県の梨防除暦(農薬散布の目安)の内容に反映されるなどの成果をあげています。

 一昨年には環境保全型農業推進コンクールで優秀賞をいただきました。今年は雑誌にも紹介され、今、県内はもとより全国からの梨農家の視察受け入れで大忙しです(写真は愛知県からの視察の様子)。研究部活動の紹介が農文協の雑誌『現代農業』2001年6月号より連載中で、我が家も登場しています。

 

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