セミの抜け殻の不思議(のらやま通信 NO.80 2001年8月号)

セミの抜け殻の不思議

昨年の8月号に引き続いてセミの観察シリーズ第2段です。(今年の長女(小6)の夏休み理科研究から)

 

 

 4年生のセミの研究ではぬけがらを観察しました、今度は幼虫を観察することにしました。セミの幼虫は夕方になって土の中から出てきて脱皮することやその脱皮する様子は図鑑などを見て知っていましたが、実際のところは見たことがありませんでした。

 

 7月30日。まず幼虫が土から出てくる瞬間を見るために、一本の梨の木のまわり半径2mの範囲の草刈りをしました。雑草をとって土の表面だけにすると直径2cmくらいの穴があちこちにあいていました。モグラにしては小さすぎるし、ミミズにしては大きすぎます。、きっとセミの穴だと思いました。

 

 午後3時頃からどうやって土の中から出てくるか見ていました。でも草を刈った部分からはなかなかセミの幼虫が出てきません。ふと横を見ると、草の間を幼虫が歩いていました。

・17時45分

 幼虫発見。梨の幹に向かって考えていた以上に早く歩いていきます。2mほどの距離を3分くらいで一直線に歩きました。

・17時50分

 梨の幹にたどり着きました。後ろ足で支えながら前足を伸ばして登っていきます。木の幹から太い枝、細い枝へと順々に移って行くのかと考えていましたが、違っていました。途中で葉から葉へ渡ったり、梨棚の線から葉っぱへターザンのように飛び移ったり、そろそろ止まるかなと思った後も葉っぱの表、裏、ふちとうろちょろ歩き回っています。けっこう忙しそうです。でもここと決めてからはピクリとも動きません。指でさわってみましたが、ぜんぜん反応しませんでした。

・18時47分

 幼虫の背中の部分に割れ目ができ、白いものが見えてきました。脱皮開始。背中(胸)、頭、足の順に出てきました。お尻の先だけがぬけがらについていて、頭が下になってしばらく宙ぶらりんのかっこうのままでいました。鉄棒に足をかけてぶら下がっているようで頭に血が上らないのかと思いました。そのうち腹筋運動をするように体を起こし、前足で抜け殻につかまって最後まで残っていたお尻の先も出てきました。7時12分、脱皮完了。暗くなったので観察中止。

 

 7月31日。携帯ライトの光だけでは観察しにくいことがわかったので、スタンドも用意してまたセミの幼虫を観察しました。

・18時20分

 地面を歩く幼虫発見。また土の中から出てくるところは見られませんでした。幼虫はうろうろ歩き回るのですが、なかなか梨の幹にたどり着けません。約2時間、をひたすら歩いていました。

・20時30分

 かわいそうに思えたので梨の幹にとまらせてやりました。そしてすぐに木を登りはじめました。

・21時20分

 葉にとまって動かなくなりました。ここで観察は中止しました。

 

 30日の幼虫は発見してから15分で脱皮をはじめたのに、31日の幼虫はなぜ2時間も地面を歩いていたのか考えました。はじめは幼虫の動いた後がわかるように幼虫のまわりの雑草を刈ったので、その振動や音にびっくりしていたのかと思いました。でも、暗くなって幼虫がよく見えるようにスタンドの光を当てると、そのスタンドの方に向かってくるような気がしました。「君の登る木はこっちだよ」と木の幹の後ろからスタンドの光を当てたら、幹をよけてスタンドの方まで歩いてきました。

 

 そこで、セミの幼虫は光に反応するかを実験しました。幼虫を4匹とってきて、光を当ててみました。午後6時、1回目の実験。4匹のうち3匹は光の方向に行きました。1匹は違う方へ行きました。失敗かもしれない。もう一回、真っ暗になってから午後8時に2回目の実験をしました。今度は4匹とも光のある方向に動きました。光の位置を変えると、またそちらの方向へ移動します。

 4年生の時の観察で、一枚の葉っぱにたくさんのセミのぬけがらががかたまってついているのを見つけました。なぜ同じ葉に集まるのか、その時は先に登っていったセミの臭いかなにかを感じて後をついていくのかななんて考えました。今年の観察で、セミが木の枝の高いところで脱皮するのは、幼虫が光のある方向へ移動した結果、高いところにたどり着くのかもしれないということがわかりました。ということは、ぬけがらが集まった葉っぱは脱皮するのにちょうどいい明るい場所であるということだと考えられます。

 ではなぜ明るいところで脱皮するのか、安全だから?それとも羽を広げるのに広い場所が必要だから?それとも飛び立つときにじゃまが少ない場所だから?2年前の疑問の一つが解決できましたが、また新しい疑問がわいてきました。

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