米づくりは苗半作(のらやま通信 NO.90 2002年6月号)

米づくりは苗半作

 今年の米づくりでは、新しいことをちょっと試みています。種もみを薄蒔きにして丈夫な苗を作ってみたのですが、はたして結果は?

 

 米づくりでも減農薬化、無農薬化ができないかと、以前からいろいろと情報を集めていたのですが、中でも稲葉さんという方が主宰しているNPO法人民間稲作研究所の活動に興味を持っていました。彼のめざすところは有機栽培でありながら慣行栽培を超える小力・低コストの稲作。古くから「米づくりは苗半作」というような云われ方をしてきましたが、彼の主張も病気や雑草に負けない稲は丈夫な苗づくりからというものです。

 田植機で移植する栽培方法では、もみを苗箱に蒔いて育てます。慣行栽培では一箱に200g前後のもみを蒔くのに対し、稲葉流は超薄蒔き、40g。まずは体験してみようと、3月に開かれた育苗講座にわが家の父が参加してきました。

 参加者は関東一円から、ちょうど10人。有機認証を受けようというプロ農家から新規就農して有機米を直売しようという若者まで熱心な受講者ばかり。ちょっと体験という参加者は他にいません。動機が中途半端で居心地の悪いこと。

 

 慣行栽培の問題点と解決の方向についての講議の後、さっそく実技です。超薄蒔きした苗を機械で植えるのですから、箱全体に均一に少ないもみを蒔くための仕掛けが必要です。そこで専用の播種機の登場。等間隔に穴のあいたプラスチック板とその台なのですが、プラスチック板の下にシャッターがついています。穴にもみを入れてシャッターを開いて苗箱に落とします。

 プラスチック板をローラーの上にのせて前後に振り、もみを板の上を滑らしながら穴に入れるのですが、なかなか全部の穴に入らないのですよ、これが。ある農家で500枚の苗箱を蒔くのに5日かかったという話を聞いて、よくやったなあと感心してしまいました。

 

 さっそくわが家でも超薄蒔き手動播種機を手に入れ、20a分だけ育苗してみました。下の写真で、左から40g播種、80g播種、200g手蒔きしたものです。

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 下の写真は約一ケ月後、田植え直前の苗の様子。1枚目が40g播種、2枚目が200g播種分です。茎の太さの違いがわかるでしょうか。

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 さらに、田植え後一ケ月の稲の様子が下の写真。1枚目が40g播種の稲、2枚目が慣行栽培の稲。40g播種の稲は苗一本から分けつしたものと思われ、茎が太いうえに茎と茎の間がまだ十分空間があります。慣行栽培の方は現段階では見栄えがいいのですが、もう横方向には育つ空間がないように見えます。

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 遠くからみたのが下の写真。左側が40g播種、右側が慣行栽培。写真ではわからないかもしれませんが、左側の方が濃い緑色。田植え時に無肥料だったんですが、それだけ生命力があるということでしょうか。秋の結果も良いとなると、来年はすべての水田で40g採用?そうなると、自動播種機がほしくなりますねえ。

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