ライ麦畑を待ちわびて(のらやま通信 NO.61 2000年1月号)

ライ麦畑を待ちわびて

 草一面の梨畑。季節はずれのようですが、昨年3月15日のもの。秋にライムギを蒔いた畑です。周りはまだ芽ぶく前の枯れ草に覆われています。

 果樹園の土壌管理の仕方には、草を生やさない方法(清耕法)と草を積極的に生やさせる方法(草生法)があります。 

 清耕法の場合は、ダニのような害虫の発生を防いだり、草刈りの手間が省けたりといったプラスの面がある一方、除草剤を連続的に使うことから土や微生物に悪影響を与えるというマイナスの面があります。

 草生法の場合は、草丈が伸びたら刈るという作業がありますが、有機質を供給したり土の保水性、排水性を改善したり、土温をコントロールしたりといった、土づくりの一環として普及しています。冬の間は除草して土を耕し、夏の間に草生させるというのが一般的な草生栽培ですが、わが家では昨年から冬の草生に取組みはじめました。その途中経過が上の写真です。

 

 以前は秋には稲わらを運び込んだりしていたのですが、その労力がたいへんな上に水田にも有機質を施す必要があります。梨が休んでいる冬の間も畑を活用しない手はありません。ライ麦なら10aあたり1t近い有機質が得られるともいわれます。畑に運び込む手間もいらないうえに、アレロパシー(他感作用)効果といって、一つの植物が他の植物の成長を妨げたり病菌の繁殖を抑える働きをするという効果がライ麦にもあって、紋羽病という根の病気を抑えるともいわれています。

 その他にも、季節風によって畑の表土を飛散させない、土の乾燥しすぎや根に与える寒さのストレスを緩めてくれる、霜どけした畑でせん定作業を行う際に長靴にドロがつきにくい、冬から春にかけて梨畑が緑のじゅうたんに覆われている景観が気持ちよいといった効果が期待されます。

 

 昨年のライ麦草生の様子を比較して見るのが次の4枚の写真です。前年の11月にライ麦を蒔いた畑と蒔かない畑の3月15日と4月3日の写真です。蒔いた畑では3月中旬に2,30cm、4月上旬には腰の高さの背丈になっています。

 

  残念ながらライ麦草生もまだ実験段階です。というのも、穂が出てきた4月8日にハンマーモアという機械で刈り取りましたが、その晩、遅霜が降り、つぼみを膨らませ始めていた「新高」が凍害を受けてしまいました。刈り取った草が表土を覆ってしまい、夜間、地面からの放射熱を妨げてしまって、気温が下がってしまったようです。

 

 2年目の昨年秋は種まきが遅れ、12月上旬になってしまいました。その結果、発芽が悪く、今年は昨年並みの草生が望めそうにありません。霜が降りる前に蒔かねばならないという反省をしています。はたして4月にはどうなりますやら。