雑草にもちゃんと名前があるんです(のらやま通信 NO.64 2000年4月号)

雑草にもちゃんと名前があるんです

  4月上旬の梨畑は越年性、多年性の雑草の花で彩られます。剪定作業を終え、ほっとしていると、彼岸を過ぎた頃から下草の背丈が急に伸びだし、一気に花を咲かせます。

 

 

 紅紫色の唇形の花で目立っているのは『ホトケノザ』。茎の上部につく葉は柄がなく、半円形になって互いに抱くような形になっています。この形が仏の台座にたとえられてこの名があるといわれます。

 幼苗がホトケノザと似ている『オオイヌノフグリ』は、中心が白くまわりが青紫色の花をつけています。ヨ-ロッパ原産の帰化植物で、実の形が犬のフグリの形に似ていることから命名されたようです。

 茎の先に花柄が出て十字状の白い小さな花をつけているのは、春の七草のひとつ『ナズナ』。実が平たい三角形で三味線のばちに似ているのでペンペングサの方言があります。地面を被った群生はオオイヌノフグリと同じだけれども、葉の質感が肉厚で柔らかく白い花をつけているのは『ハコベ』。ナデシコ科の雑草であったことを今回初めて知りました。

 

 この他にも、巻ひげでからみつき紅紫色の蝶形した花の『カラスエンドウ』、冬の間はタンポポのように葉が地ぎわで四方に水平に広げナズナと同じような黄色い花をつける『イヌガラシ』といった越年草。さらに、後に赤い実になる黄色い可憐な花をつけた『ヘビイチゴ』、太い根を持ちゴボウのような葉の『エゾギシギシ』、牧草が野生化した『イヌムギ』といった多年草もこの時期、花をつけます。

 梨畑の周囲に目をやると、クローバーのような葉をしてピンクの花をもった『ムラサキカタバミ』や淡紫色した花の『タチツボスミレ』のような野草も見られ、梨畑を彩っています。 

 どれも庭や道ばたなどいたるところで普通に見られる草ですが、これまでが冬の雑草で、これから5月ごろを境に、1年性の夏の雑草に変っていきます。

 

 さて、下草といえば、12月に種を蒔いたライ麦。4月10日には膝丈まで成長しました。種苗会社の試験園ということでメーカーの方が見に来て、あと2週間ほどで穂が出てくるとのことでしたが、その後の作業の関係で12日に刈り取ってしまいました。

 刈り取った後に歩くと、ライ麦を蒔いた部分とただの雑草であったところでは全然柔らかさが違います。ライ麦は地上に伸びた背丈と同じ深さにまで地中に根も伸び、出穂期に刈り取れば地上、地中合わせて10a当たり乾燥有機物で7,800kg分に相当するそうです。その分の稲わらを田んぼから運び込む労力を考えたら、種子代なんて安いものです。これはいただきです。来年からは全園で採用することにしましよう。