梨づくりを振り返って(のらやま通信 NO.92-94 2002年8-10月号)

梨づくりを振り返って

 昨年春から今年の春までのほぼ1年間、その時々の作業の様子を『今週の梨園』として道の駅直売所で発信してきました。作業の順を追って、NO.92 8月号では11月から2月、NO.93では3月から4月、NO.94では前年の4月から7月までを紹介します。(なお、NO.92 8月号は2001年12月号2002年1月号と、NO.94 10月号は2001年7月号と内容が同じですので省略させていただきます。)

今週の梨園2002/3/12

 3ヶ月以上も続いた剪定作業もようやく終わりました。剪定された枝は畑の中から持ち出されていますが、さて、これをどうしましょう。これまでは焼却して、熾き火状態になったところで水をかけて消し炭にし、土壌改良材として再び畑にかえしていました。しかし、年々、野焼きに対する視線が厳しくなり、対応に苦慮しています。チップ状にして堆肥化することも考えられますが、梨の場合には、土壌病菌のこともあって完塾堆肥にしないと利用できません。煙りを出さない炭化装置やすぐに分解される植物繊維状にまで処理する機械も開発されていますが、個人で購入できる価格ではありません。地域内リサイクルのシステムと設備が確立、整備されるまでの間、梨のせん定枝の焼却にご理解ください。

 

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今週の梨園2002/3/19

 今年は桜の開花が最も早い記録になったそうですが、梨ももう芽がほころびはじめました。早いといわれた去年よりも10日も早く、遅い年に比べるとひと月近く早く開花しそうです。それだけ早く収穫できるかというと夏の天候次第ですし、むしろ遅霜による花の障害が心配されます。去年の3月31日にはぼたん雪も降りました。異常気象の年ばかりで平年並みの年なんてないといわれますが、農家にとっては毎年、平年並みの天候で推移してほしいものです。

 

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新高の花芽の様子

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豊水の花芽の様子

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幸水の花芽の様子

(収穫の遅い品種ほど早く花が咲きます)

   

今週の梨園2002/4/1

 下の写真は豊水の花です。丸い「雄しべ」が花粉のつまったカプセル、黒い小さな「雄しべ」はすでに花粉が飛散してしまった抜け殻です。花を摘み、乾燥させて花粉を採取し、人の手によって人工的な受粉作業が行われます。

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 梨はたとえば幸水の雌しべに豊水の花粉を受粉するというように、品種の異なるもの同士の交配でないと実がつきません。一つの畑に多品種の梨を混ぜて植え、風や虫、ミツバチによって自然に交配できるようにもしています。最近は花粉も中国から輸入され、花粉を自家採取しない農家も増えてきました。

 

今週の梨園2002/4/7

 おぼろ月夜、花が咲き誇っている梨畑はぼーっと白く光って見えます。この様をむかしの中国では「梨雪」とか「梨雲」と形容したそうです。梨畑で花見をするにはたくさんの花があった方がいいのでしょうが、梨農家としてはほんとうはならせる実の数だけの花で充分なんです。まさに「花多くして実少なし」です。今の時期、交配のかたわら、よくない位置についた花などをどんどん摘んでいます。最近は咲いた花すべてを無闇に交配するのでなく、ミツバチも入れずに必要な花だけをひと花づつ確実に交配する方法も試みられています。

 

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今週の梨園2002/4/14

 梨の花の交配が終わるとさっそく多目的防災網を広げます。以前は主に鳥害向けに7月ごろに広げていました。ところが降雹は4月、5月に多く、何度か痛い目にあってからはできるだけ早くに開くようになりました。交配中はミツバチなどの働きの邪魔になりますし、3月では降雪の心配もあります。

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 網は格子状のものだけでなく、格子の中にクロス状に糸を編み込んだものもあります。この網ですと、細かい雹も通しません。カメムシもくぐり抜けません。しかし、クロス状の糸の分だけ重量が増え、風の抵抗も増します。もちろん、価格も…。網は紫外線等によって劣化していき、10年もしないうちに交換しなければなりません。最近、ようやく廃棄網の処分ルートが確立されつつあります。

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今週の梨園2002/4/21

 摘蕾、摘花作業はまず花と花の間が15〜20cm間隔程度になるようにすかします。枝の真上や真下に出た花は落としますし、実になったときに枝や棚線で傷つきそうな位置の花も落とします。葉のついていない花も、将来、玉伸びが悪いので落とします。一番面倒なのは子花です。子花は実になっても変型果になりやすいので嫌われます。写真の軸に葉のついた側の花(右側)が小花です。実際には様々な形があって親花との区別を判断するには経験がものを言います。摘果作業まで含めると、8千とも1万ともいわれる花のうちから一つだけに実をつけます。

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