セミの抜け殻の不思議(のらやま通信 NO.68 2000年8月号)

セミの抜け殻の不思議

 うちは梨園です。梨畑にセミの抜け殻がいっぱいあったので、なにか秘密があるのかと思って、セミの抜け殻を調べることにしました。

 まず、セミの抜け殻が一本の梨の木のどこにいくつあるのかを調べました。

 梨の木を見ると、太い幹と細い枝があって、セミの抜け殻の大部分は細い枝の葉についていました。枝の配置と抜け殻の分布は下の図のようでした。

 

 これをみると、セミの抜け殻は木の枝全体についているのではなく、幹に近い枝に多くついていて、それもよくついている枝とまったくついていない枝があることがわかります。一本の梨の木はになんと184個のセミの抜け殻がありました。予想では10個ぐらいかなと思っていたので、びっくりしました。セミの抜け殻が梨の木のどこにどのようについているかを調べると、葉の裏側で頭を上にしてついているのがほとんどでしたが、葉の表側や葉の縁、細い枝先や太い幹、枝を棚に結んでいるひもや、梨の実についている抜け殻も見られました。また、一枚の葉の両側についていたり、一枚の葉に6個の抜け殻がついているものもありました。

 

 セミの幼虫がどのくらい木を登って脱皮するのかを木の幹の地面のところから抜け殻のついている葉のところまでの長さ(距離)をひとつひとつ計ってみました。それをグラフにしたのが下の図です。

 一番短いものは220cm、一番長いものは、なんと!550cmも木を登っていました。セミの幼虫の長さは3cmぐらいです。140cmぐらいのわたしがセミの幼虫だとすると、257mも木を登ることになります。

 畑には100本以上の木がありますので、184×100=18400、約20000匹のセミがいることになります。梨畑はセミの天国のようです。なぜかというと畑全体に網をかけているからです。網をかけてあると、セミの敵の鳥が入って来れません。えさとなる梨の木の汁もいっぱいあるからです。

 セミの抜け殻のほとんどは葉の裏側にありました。雨をよけたり、風をよけたり、敵からかくれたりするするためだと思います。セミの抜け殻のほとんどは頭を上になっていました。セミの幼虫は前足の2本が大きくて、前足でがっちり葉にしがみつきやすいのだと思います。

 観察をしてふしぎに思ったことがあります。抜け殻がたくさんある部分とまったくない部分があることです。同じように、抜け殻が一つしかない葉と4つも5つも抜け殻のついた葉もありました。幼虫の好きなところときらいなところがあるのかもしれません。それとも、最初に登った幼虫の後を次の幼虫がついていくのかもしれません。セミの幼虫は暗い中でも見えるのかな、それともにおいをかいでいくのかな。

 

(これは小学校4年であったわが家の姉娘の昨年の夏休みの自由研究から一部編集したものです。もちろん親の手助けがあってのもの。夏休みは梨の出荷で大忙しですから、幸水豊水の端境期の8月下旬の2、3日で仕上げられるものになってしまいます。今年も親子ともども頭を悩ませる時期がやってきます。)