スキー、スキー、好きー(のらやま通信 NO.73 2001年1月号)

スキー、スキー、好きー

 長期の休みになると、親は子供のためと称して子供をどこかに連れて行こうと考え、子供もそれを期待します。実は、親のストレス解消、脱日常の機会になっているのですが…。

  この冬休みも、休みになる前から娘たちがスキーに連れていけと騒いでいて、父もそのつもりでスキー場ガイドを夜毎ながめていました。年末はそれなりに忙しく、三が日は混んでいるので避けたい、となると1月4日から8日でいうことに、しかも、忙しいから日帰りのできる栃木県あたりでと考えていました。ところが今年は暖冬という予報がはずれ、1月4日頃は寒波がやってきていて、東北から北陸、関東北部も大雪警報が出されるほど。吹雪の中のスキーなんてご免です。冬休み中のスキーは無理かと思った母でした。

 1月5日もいつも通り梨のせん定作業をしていましたが、昼食をとりながらパソコンをいじっていた父が突然「これからスキーに行こう」と言い出しました。日帰りだからと東北、上越方面のスキー場ばかり考えていたが、中央線沿線のスキー場は晴れているというのです。諏訪から上った車山スキー場なら仮眠施設もあるというので予約をいれて、あわてて準備していざ出発。

 20時頃にスキー場に到着。ナイタースキーでまだにぎやかでした。仮眠室は利用料お一人様2,000円也。大広間に毛布と枕が用意され30人程の定員のようでした。「まるでタコ部屋だね」長女が漫画で覚えた言葉で表現してくれました。「違うよ、タコ部屋というのはね。…」とにかく一家5人の宿泊代が10,000円(食事別)で済みました。

 夜のうちは粉雪が舞っていましたが、翌朝は晴れ。コンデションは今期最高とか。リフトも7時30分から動いているので、早々に朝食を済ませ、さあ、ファミリーでスキー!と、格好良くはまいりません。父と子供たち3人はリフト1日券を買ってリフト乗り場に急ぐのですが、一人残された母はスキー教室初心者コースに一日入門。結婚前までスキーの経験ゼロ。子供と一緒に練習すればうまくなるとたかをくくっていたのですが、うまくなるのは子供ばかり。生来の運動神経の鈍さと身重(文字通りの意味で)の体ゆえ、ここ数年は一人でスキー教室、しかも毎回初心者コースに入学しています。

 講習スタート。生徒は6人。母が一番のおばさんのようでした。平坦なところを歩くこと。斜面を歩くこと。緩やかな斜面を3m、5mと滑っていきます。体重の乗せ方や板のエッジの立て方、等々少しずつステップアップして30m程滑れるようになりました。午後はリフトに挑戦です。動いているリフトに長いスキー板を履いたまま乗るなんて、これまでも何回か失敗しているのでドキドキです。

 

 「前に進んで、腰掛けて、安全バーを下ろす。上に着いたらスキーを滑らせながら、立って、ストックを使わないで滑る。いいですね」そういう先生の指導の甲斐あって、難無く成功。ゲレンデを2回滑り下りました。「お母さん、急にうまくなりましたね」と先生。「いやあ」その言葉に自分を褒めてあげたかった母でした。できなかったことができるようになった達成感を久しぶりに味わった一日でした。

 一方、父と子供グループは中級レベルのコースをすべて滑って、満足、満足。バタバタ準備をして、朝から夕方まで滑って、またあわてて返るというスキー旅行でしたが、今後5人で旅行することがあるかなあと思いながらの冬休みのビッグイベントでした。

 久しぶりに日常を離れて子供達をみると、その成長ぶりに気付かされます。みんな、ただスキーがうまくなったばかりでなく、三者三様のチャレンジの仕方でした。兄は、2年間、部活動だ受験だでブランクがありましたが、妹達の手前、一番上のリフトまで挑戦。ところがかなりの急傾斜の斜面で、ビビって足をつりながらも弱音をはかずに下りてきました。初めは腰の引けていた姉も結構様になって滑れるように。目標を持って今度こそ今度こそとがんばったので、ぐんと上達しました。「お姉ちゃんがすごくうまくなったと思うよ」という父の言葉に大満足です。そこそこ器用な妹はさほど苦労せずにマイペースで楽しんでいましたが、兄や姉といっしょに滑らされるのですから、内実は大変だったかもしれません。

 帰路の車内の娘達は、スキーは母よりうまい、母に勝てるということに自信を持ち、かいがいしく、飲み物は?お菓子は?ガムは?父母を世話してくれました。家でもこれくらい自分から進んで何でもやってくれたらいいのですが。