杉山ケイマ作『ふしぎなふしぎなたね』(のらやま通信 NO.72 2000年12月号)
小学校5年の長女が原稿料(!?)をせしめようと物語を作ったというので、その意欲を買ってここにその『処女作』を発表します。
『ふしぎなふしぎなたね』 杉山ケイマ 作
木の多い村にケイマ君という男の子とお父さんとお母さんが住んでいました。ある日、目が覚めたとき、ケイマ君はお父さん、お母さんといっしょに野良仕事を手伝いたいと思いました。
「おはよう。今日は仕事を手伝うよ」
「ええーっ、手伝うって!助かるわ」とお母さんが言うと、
「めずらしいな。アハハハ…」とお父さんが笑いました。
朝ご飯を終え、仕事をしに畑に行きました。
「ケイマ、おまえは土を起こしてくれ。お父さんもいっしょにやるから」と言われました。お母さんはたねをまく仕事をしました。
ケイマ君が土を起こしていると、ガツと何かに当たる音がします。「何だろう。石かな」と。掘り出して見ると、石のような何かが出てきました。よくみると、黒っぽいたねの形をしています。それをポケットに入れ、また仕事を続けました。
家に帰って、畑でひろったたねのようなものをポケットから取り出して見ると、少し大きくなったような気がします。「何かのたねかもしれないから、明日まいてみよう」と考えました。
次の日の朝、朝ごはんも食べずに、ケイマ君は裏庭にたねのようなものをうめました。
「このたねのような形をしたものがまだあるかな。宝探しみたいで楽しそう」と思い、また仕事を手伝うことにしました。
畑で土を起こす仕事をしていると、またガツ、ガツ、ガツ、ガツ、ガツと5回続けて音がしました。掘り出してみると、今度は黄色いたねの形をしたものです。家に帰って、黄色いたねの形をしたものも裏庭にうめました。
一週間もすると、黒い石みたいだった方は芽が出てきました。黄色い方ももう少しで芽が出そうです。ケイマ君はやっぱりあれはたねだったんだと思いました。一ヵ月たつと、黒い方は花が咲きましたが、黄色い方はいつのまにか消えてなくなっていました。
黒い方の花の中をよく見てみると、小さな小さな子どもが丸くなって寝ていることに気がつきました。ケイマ君がびっくりして見ていると、その小さな小さな子は目をさましました。
「あなたが育ててくれたのですか」とニコッと笑って聞いてきました。
「え、まあ」とケイマ君が答えると、
「そうですか。ありがとうございました。私はブラック・レンダンといいます」
「ぼくは杉山ケイマ。よろしく」
「ところで、黄色い色をしたぼくと同じ形のものは見ませんでしたか」とレンダンはさらに尋ねてきました。
「見たよ」
「どこにあるのですか?」
「君といっしょにうめたんだけど。君の一日あとで」
「え、一日ずらしたのですか!?」とレンダンはあわてているようでした。
「なぜ、そんなにあわてているの?」
「地球のまわりには太陽からの紫外線を防ぐオゾン層があるんです。でもそのオゾン層はプラスチックを燃やした煙で少しずつやぶれていきます。その紫外線に長くあたると皮膚ガンという病気になるんです。黄色いたねは煙の力を大きくする働きがあって、そのままにしておくとケイマ君も外で遊べなくなってしまいます」
「えー!そうなったらどうしよう」
「そうならないように手伝ってくれませんか」
「どうすればいいの」
「黄色いやつは力は弱いからたおすのはかんたんです。でも人間の力が必要で、プラスチックのことを勉強してほしいんです」
「勉強はいやだけど、外で遊べなくなるのはもっといやだから、がんばるよ」
「プラスチックの中で一番害するものを探してください。そこにあの黄色いやつがいるはずです。直接、死なすのはかわいそうだから、一度この薬でたねに戻して燃やせるゴミといっしょに燃やすと肥料になります。そうすると、もう悪さをしませんから」
ケイマ君はたくさんのプラスチックに関する資料を集め、調べ始めました。
「あ、あった。一番害するプラスチックは塩素系のプラスチックだって。塩素系というと、ラップがそうだって学校で習ったよ。ラップならうちにもあるよ」
ケイマ君はラップを持って戻ってきました。
「たねにもどす薬はケイマ君がかけて。黄色いやつはすばしっこくてつかまえにくいから」と注意しました。
「わかった。いくよ。いち、に、さん!」
ラップに薬をまくと、黄色い液体が出てきました。それにさらに薬をまくと、たねのようにかたまりました。
「やったー」とケイマ君がいうと、レンダンが「まだ、安心できないんだ。燃やしてないから」といいました。
「よし、早く燃やして地球の陰の守り神になろう…うーん。レンダンは?。…夢だったのか」
ケイマ君は目がさめました。あの薬がほんとうにあったらいいのにと思いました。そして、その薬で地球を害するやつをたおして本当に地球の陰の守り神になりたいと思いました。