ケナフで卒業証書を作った話(のらやま通信 NO.87 2002年3月号)

ケナフで卒業証書を作った話

 長女が小学校を卒業します。ケナフを育てて卒業証書を作りました。

 本人からのレポートです。

 

 

 ケナフの卒業証書、すごく×100うれしい×200

 

 はじめてケナフに出会ったのは一学期でした。なんでもチャレンジさせてくれる鈴木先生が「ケナフを育てて卒業証書を作ろうと思うけど、どうかなあ」と言い出したのがきっかけでした。6年生全員38人、誰もケナフのことは知りませんでした。先生からケナフについて教えてもらいました。たくさんの二酸化炭素を吸って酸素を出すので地球温暖化防止に役立つこと。紙が作れること。紙が作れるということは木の代わりになって、森林保護になること。食べたり、染め物に使うこともできること。

 

 私達はまず種取りから始めました。ケナフの種はからに入っていて、そのからは細くて短いとげが生えています。手袋を使わなかったので、あちこちから「いてっ」「ちくちくするぅー」という声が上がりました。一本のとげは痛くないのですが、たくさんあると痛いとか、ちくちくするとか、かゆいという感じもありました。手を洗ってもう一度やるともっとちくちくしました。残っている水気でもっととげが付きやすくなっていたようです。次に、皿の上にガーゼを置いて、種をのせて水を少しやりました。皿とガーゼはケナフの種のベッドです。発芽したケナフは学校農園に植えました。一週間もしないうちに、ケナフの子どもが土からひょっこりと顔を出しました。先生から成長が早いとは聞いていたのですが、こんなに早いんだとおどろきました。

 

 ケナフは水がたいへん好きなので、水やりを当番制でやりました。夏休みも休みなく水やりをしました。ケナフはもう2mにもなっていました。こんなに大きくなるとは思いませんでした。夏休みには間引きしたケナフをみんな3本ぐらい持ち帰りましたが、だれもケナフを自由研究にしてきませんでした。たぶん、半分以上の人はケナフを育てなかったのだろうと思いました。二学期になったある日、先生がケナフを抜きました。みんな「何してんの!」って言っていましたが、実はケナフの根を見せようとしていたのでした。2m以上のケナフをたったの10cmぐらいの根で支えていました。みんな驚いていました。

 

 秋になり、竹の子祭りがありました。私達は「ケナフの紙すき体験」「ケナフの染め物」「ケナフを食べよう」「ケナフって何?」の4つの出し物を準備しました。祭りの前に、ケナフ料理を試してみました。ケナフの花びらと葉の天ぷら、花びらのマジックジュース、ケナフクッキーなどをつくりました。ケナフはハイビスカス科で、花びらはクリーム色をしていますが、元の方は紅色をしています。マジックジュースは花びらに熱湯を注ぐだけですが、さらにレモン汁などを入れると紅茶のような赤色に変化します。はっきり言っておいしくありませんでした。ケナフクッキーはケナフパウダーを混ぜて焼いたクッキーです。

 

 紙すきと染め物は「ふなばしケナフの会」の方に来てもらい、教えてもらいました。紙すきはケナフのくきの部分と皮の部分を分けてミキサーにかけ、パルプを作ります。はがきとしおりは小さいのでしわもできず、難しいという気持ちはありませんでした。染め物は花びらのクリーム色の部分と紅色の部分を分けて染めます。それぞれのグループのみんなはケナフの会の人にたくさん質問していました。

 

 本番の祭りでは「紙すき体験」と「ケナフを食べよう」はたくさんお客さんが入ったけれど、「ケナフの染め物」と「ケナフって何?」は人気がありませんでした。「ケナフって何?」はまじめすぎたかもしれません。

 

 「ケナフ刈り」の日になりました。ぬけないものもあるかと思い、知恵をはたらかしたつもりでのこぎりも用意しました。ぬきとって見ると、やっぱり根は小さかったです。それでもぬけないものもありましたので、のこぎりで土から10cmくらいのところで切り倒しました。意外に切りやすかったです。ところが遅れてきた先生におこられてしまいました。実は、ケナフの皮でかごを作り、くきでかけじくを作ろうとしていたのです。10cmも残して切ってしまうと、材料が少なくなってしまいます。それに根も掘り出さなくてはなりません。ぬいたケナフから葉をとり茎と皮だけにし、種もとりました。数日後、皮をはぐ作業をしました。これがこれまでで一番たいへんでした。皮は細かくちぎれてしまうので、下にビニールシートをしいて集めました。

 

 ついに自分達で作ったパルプで卒業証書を作る日が来ました。ケナフの会の人がまた来てくれましたが、いっしょに新聞社とラジオ局の人も取材に来ました。二人の目を気にしながら証書づくりがはじまりました。プラスチックの箱にパルプを溶かしたものがあって、網ですくい取ります。紙すき器の網には小学校の校章が布で書いてあります。意外に難しいので、ケナフの会の人に手伝ってもらいました。網ですくいとったら掃除機のようなもので水を吸い取り、板の上で乾燥させます。バスタオルを使って水気をとり、次にガーゼをかぶせてアイロンをかけます。ガーゼがしわになったらすぐに直さないと、証書までしわになってしまいます。ここで5人ぐらいが失敗しました。完全に乾く前に指でさわって穴をあけてしまうという失敗もありました。完全に乾燥したら完成です。まん中に校章があって、少し茶色がかった自然の色で、カッコイイ証書ができました。

 

 自分で証書ができるなんて思わなかったし、新聞とラジオの両方にのれてすごく×100うれしかった×200です。ケナフにかかわれてよかったと思います!!